アルファ線核医学治療薬TAH-1005([211At]NaAt)による分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん)患者を対象とした第I相医師主導治験
目的
標準的治療にて治療効果が得られない、あるいは標準的治療の実施・継続が困難である分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん)の患者にTAH-1005を静脈内単回投与し、安全性、薬物動態、吸収線量、有効性を評価し、第Ⅱ相以降の推奨用量を決定する。
基本情報
参加条件
性別
男性・女性
年齢
18歳 以上上限なし
選択基準
1) 甲状腺全摘術後の分化型甲状腺がん(乳頭がん、濾胞がん)の患者で、以下の(1)標準治療抵抗性、又は(2)標準治療継続困難の条件を満たす患者
(1)131I-NaI治療等の標準治療抵抗性の患者
3回以上の131I-NaI治療経過で治療効果が不十分である131I-NaI治療抵抗性、かつチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)治療の実施あるいは継続が困難である場合
(2) 131I-NaI治療等の標準治療継続困難な患者
残存甲状腺に対するアブレーションを実施済、又は、再発/転移病変に131I-NaI治療を実施済であるが、本試験の参加時点において再発/転移病変を認めており、かつ標準的治療である131I-NaI治療の継続が困難、あるいは局所への放射線治療(追加を含む)が適応とならない場合(131I-NaI治療抵抗性でない場合はTKI治療の実施適応にならない。)
2) 同意取得時に年齢が18歳以上の患者
3) ECOG(Eastern Cooperative Oncology Group)のPS(Performance status)が0から2で全身状態が安定している患者
4) 臨床症状や診察所見から判断して、6カ月以上の生存が期待できる患者
5) 症状を有する脳転移がない、またはコントロールされている患者
6) 登録前30日以内の心電図及び呼吸数、血中酸素飽和度に臨床的に問題となる異常所見を認めない患者
7) 登録前30日以内の臨床検査値が、プロトコールに規定する範囲にある患者
8) 治験の説明を十分に聞き、治験実施計画書に従って、検査、観察期間中及び追跡調査時の来院、治験期間中の避妊等について同意し、同意文書に署名した患者
治験内容
介入研究
主要結果評価方法
1.有害事象
測定項目:有害事象発生の有無、種類、重症度、発現頻度及び発現期間
測定時期:ヨード制限開始時から投与後6カ月、又は中止時
評価基準:CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events)第5.0版の日本語訳
2.用量制限毒性(DLT)
治験薬の投与後4週以内において、治験薬との因果関係が否定できない以下の項目のうち、1つ以上当てはまる場合の毒性と定義する。
1)7日以上持続するGrade 3の血液毒性
2)持続期間によらないGrade 4以上の血液毒性
3)持続期間によらない発熱性好中球減少症
4)出血傾向を伴う、または血小板輸血を要する血小板減少症
5)赤血球輸血を要する貧血
6)感染を伴う好中球減少症
7)対症療法によって軽快しない7日以上持続するGrade 3*以上の非血液毒性。ただし、以下を除く。
臨床的に意義のない臨床検査値異常
最大限の支持療法によりGrade 2以下にコントロール可能な毒性
原疾患の増悪によるもの
( CTCAEv.5.0JCOG版で規定されるグレード)
第二結果評価方法
1)安全性に関する副次評価項目
以下の項目を安全性に関する副次評価項目とする。
(1) バイタルサイン等(血圧、脈拍、血中酸素飽和度)、呼吸数、体温
(2) 体重
(3) 自覚所見及び他覚所見
(4) 血液学的検査
(5) 血液生化学的検査
(6) 尿検査
(7) 12誘導心電図
2)薬物動態パラメータの評価
薬物動態の評価のために、採取した血液検体の放射線量を測定し、測定した放射線量をもとに薬物動態パラメータを算出する。
(1) 採血ポイント:投与時(投与直前に採取する)、投与後30秒(+/-10秒)、1分(+/-20秒)、2分(+/-30秒)、10分(+/-1分)、1時間(+/-10分)、3時間(+/-15分)、6時間(+/-30分)、24時間(+/-2時間)
(2) 血液検体の取扱い
薬物濃度測定の為の血液検体は、所定の時間に1回あたり約2 mLの血液をヘパリン含有シリンジで採取する。
(3) 放射線量の測定方法
ヘパリン処理した血液検体から、500 mic.Lを分取し、放射線測定装置で重量ならびに放射線量を測定する。残りの検体は遠心分離を行い、血漿の重量ならびに放射線量を測定する。
(4) 算出する薬物動態パラメータ:AUC、AUC/D、Cmax、Cmax/D、Tmax、T1/2、CL(クリアランス)、Vss(定常状態の分布容積)
3)排泄(尿中、便中、呼気)
排泄動態を把握するために、尿、便、及び呼気の採取を行う。
(1) 測定項目:尿の量(mL)及び放射線量、便の重量ならびに放射線量、呼気の容積ならびに放射線量
(2) 測定時間:
尿(投与から1時間、1から3時間、3から6時間、6から24時間)
便(投与後24時間まで排便時毎回)
呼気(投与後5分(+/-1分)、30分後(+/-5分)、3時間後(+/-15分))
4)ガンマカメラ(SPECT/CT)を用いた全身スキャンと吸収線量の評価
体内分布の評価のために全身の撮像を行い、必要に応じて、局所のSPECT/CT撮像を追加する。各臓器の放射能濃度推移ならびに滞留時間(Residence time)を計算し、吸収線量(mGy/MBq)を算出する。
(1) 測定時期:投与1時間後、3時間後、24時間後
(2) 評価項目:体内主要臓器における放射能濃度の経時的推移、各臓器の吸収線量(mGy/MBq)
5)予備的な有効性の評価
(1) 画像における腫瘍縮小効果の判定(スクリーニングのCTにおいて、RECISTで標的病変を有する場合)
腫瘍縮小効果判定は「固形がんの治療効果判定のためのガイドライン(RECISTガイドライン)改訂版version 1.1 -日本語訳JCOG版-:Revised RECIST guideline(version 1.1)」を参考にCT上の転移及び再発病変について評価を行う。
(2) [131I]NaIの取込能の変化
スクリーニング、投与3カ月、6カ月後の時点で診断用[131I]NaIスキャンを実施し、集積程度の変化からヨウ素/アスタチンを取り込む機構であるNIS(ナトリウムヨウ素共輸送体)の発現程度を推定し、甲状腺がん細胞の残存程度を評価する。
(3) 腫瘍マーカーの経時的推移の評価
分化型甲状腺がんの腫瘍マーカーである血中サイログロブリンの経時的な変化を評価する。
利用する医薬品等
一般名称
TAH-1005
販売名
なし